高齢者の熱中症にはご注意を!応急処置の仕方は?
5月初旬に今年初の熱中症の発症が確認されてから、
あちこちで熱中症予防を呼びかける声が聞こえるようになりました。
今月下旬には「熱中症対策シンポジウム」なども開催されるようですね。
いよいよ本格的な暑さの到来なのだなぁ、と
「熱中症」という言葉を聞くようになってから、夏の訪れを感じる次第です。
案外同じような方も多いのではないでしょうか?
さて、今回は救急搬送される熱中症患者の、
実に半数以上を占める「高齢者の熱中症」についてのお話です。
皆さんの周りには、長生きしてほしい、大切な人がいますか?
実は高齢者の熱中症は、本人も周りも気付ききにくく、重篤化してしまいがちなんです。
大切な人の異常に気付いて、きちんとケアできるよう、
高齢者の熱中症の症状や、応急処置についての正しい知識を、
一緒に身に付けていきましょう!
高齢者に多いのは脱水症状!「かくれ脱水」に気を付けて!
そもそも何故熱中症患者に高齢者が多いのでしょう?
「体力がないから」というのがまず思い浮かぶと思いますが、
それだけではないんですね。
「かくれ脱水」という言葉を聞いたことがありますか?
自覚症状のない脱水症状、という意味で、高齢者に多く見られます。
年を取っていくにつれて、人間の食事量は少しずつ低下してゆき、
摂取できる栄養分も減っていきます。
つまり、水分などが慢性的に不足してしまうんです。
それだけでなく、高齢者になると、
体内の水分維持に大きな役割を果たしている腎臓の機能も弱くなっていきます。
通常、体内の水分が不足してくると、
腎臓は、排せつによる余計な水分の排出を防ぐために、
尿の量を減らす代わりに、一回の尿の濃度を濃くします。
ところが、加齢により腎機能が低下してしまうと、
尿を濃くすることなく、水分をそのまま排出してしまうため、
さらなる水分不足を招いてしまう結果になるんですね。
これらが慢性化しているため、高齢者はその症状が悪化しても、
自覚することがあまりありません。
これが「かくれ脱水」です。
さらに悪いことに、高齢者は発汗の機能も低下しているため、
汗をほとんどかきません。
「かくれ脱水」と、この発汗機能の低下の2つの原因により、
熱中症のリスクが非常に高いにも関わらず、
「汗をかかないからまだ暑くない、我慢できる」とその症状を放置し、
重篤化してから熱中症に気付く、というパターンが大変多いんですね。
高齢者の熱中症を早期に発見するには?「かくれ脱水」のチェックのしかた!
かくれ脱水に気付いてあげられるかどうかで、
症状の重篤化を止められる可能性がぐっと上がる、高齢者の熱中症。
では、どうやったらかくれ脱水に気付いてあげることができるのでしょう?
一緒に考えてみましょう!
■握手をしてみましょう!
突拍子もないことのように聞こえるのですが、
かくれ脱水をチェックするには、これが一番自然で効果的です。
体内の水分が不足すると、血液がドロドロになり、血流が悪くなります。
つまり貧血状態になる、ということです。
貧血の症状が出やすいのは、指先などの末端なので、
握手をして指先の温度をチェックしてみましょう。
暑い日にも関わらずひんやりとしていたら、要注意です。
また、握手と一緒に
・親指の爪を押して、白くなったのが戻るのにどれくらいかかるか
・手の甲の皮膚をつまんでもどるのにどれくらいかかるか
などを一緒にチェックできたら、してみましょう。
いずれも3秒以上かかったら、かくれ脱水の可能性アリです。
■舌の状態を見てみましょう!
舌が乾燥してザラザラしている、
うっ血して赤黒くなっている、などの状態が確認できた場合、
やはりかくれ脱水が疑われます。
高齢者の熱中症に気付いたら、スピーディーな応急処置を!
自覚症状がなく、傍目から見ても分かりにくい高齢者の熱中症は、
気付いた時にどれくらい正しい処置ができるのかで、
その後が大きく変わってきます。
かくれ脱水に気付いたなら、速やかに以下のような応急処置を行いましょう。
■涼しい場所に移動してください!
高齢者は汗をあまりかかないため、体温調節ができないだけでなく、
暑さを我慢しがちです。
汗をかいていなくても、本人が元気そうであっても、
エアコンや扇風機のある部屋へ移動してクールダウンさせてあげましょう。
屋外であれば、日陰で濡れタオルなどを当ててあげてください。
■水分補給をしましょう!
かくれ脱水というと分かりにくいかもしれませんが、
慢性的な脱水症状をさらに悪化させたものですので、
水分は相当不足しているはずです。
とにかくお水を飲ませてあげてください。
ただし、高齢者の場合気を付けなければいけないことは、
「汗をかいていなかったら、塩分の補給は不要」ということです。
発汗がなければ塩分自体はそんなに不足していないので、
この時に通常の熱中症対策のように塩分も併せて補給させてしまうと、
逆に塩分の取りすぎで高血圧の原因になってしまうので、気を付けましょう!
■服をゆるめてください!
高齢者は襟元のボタンをきっちり留めていたりしがちですが、
これは血流が悪くなるだけでなく、服のなかに空気がこもって余計に暑くなるだけです。
ボタンやベルトなど、ゆるめられるところはゆるめて、
風通しを良くしてあげましょう。
■とにかく安静に!適度に会話を試みて意識レベルのチェックをしましょう!
できるだけ横になって安静にしていましょう。
その際に、自力で水が飲めるか、ですとか、会話がきちんと成立するかなどの、
意識レベルのチェックを行いましょう。
この時に少しでもおかしなところが見受けられたら、
速やかに病院へ行きましょう。歩けないようなら救急車を呼んでも構いません。
水分補給以外は、ほぼ通常の熱中症の対策と同じです。
高齢者だからと慌てず、冷静に的確な処置を心がけましょう。
この記事のまとめ
高齢者は熱中症リスクが高いだけでなく、
自覚症状がないため重篤化しやすいことは、お分かり頂けたでしょうか?
つまり、周りの私たちがどれだけ予防してあげられるか、
また、どれだけすぐに異常に気付いてあげられるか、がとても重要になってきます。
いつも元気で長生きして欲しい、と漠然と思うだけでなく、
正しい知識を持って常にその様子に気を配り、臨機応変に対処することで、
その思いを形にしていきましょう。